2012年7月7日土曜日

声のなかで

原発の再稼働反対の意志表示が、毎週末に首相官邸の前で行われている。
先週のデモ動員は主催者発表で10万を超えたとされる。

今日、初めてそのデモに参加した。
丸の内線の国会議事堂前駅改札を出ると、その場から4番出口を目指す行列が始まっていた。夫婦や友人同士、お年寄りや小さな子供連れもいる。ただ、その列の動きは警察官が厳重に「制御」していた。

10分ほどしてようやく地上へ。すごい人、人。小雨の中、歩道が人で埋め尽くされていた。立ち止まることは警官が許さず、いったん財務省上交差点方向に誘導された。
しばらくして列が動き始めた。方向は首相官邸だ。ふと誰かが「再稼働反対!」と声を上げた。すぐにそれに応えるように群衆が同じ言葉を連呼し始める。そのまま歩道上で15分ほど叫び続けながら進んだころ、それまで警官によって歩道に留められていた人々が急に車道へと動き始めた。警察官は「車道は危険です、歩道に戻ってください!」と叫んでいるが、流れはどんどん激しさを増した。まさに「堤防決壊」だ。ある人は赤いパイロンをわざと倒し、車道へ駆ける。興奮した皆がそれに続く。シュプレヒコールが一段とボリュームアップした。

国会記者会館と国会議事堂の間の片側2車線の道路はあっという間に人々に占拠されてしまった。「再稼働はんたーい!!」「大飯を止めろ!!」「命をまもれ!!」。激しさを増した雨を浴びながらも逆にヒートアップした人々のいくつもの声が鼓膜を揺さぶるように響く。

警察官が警視庁のバスの上で「ただちに歩道に上がってください!!」と叫んでいる。それに対して横にいたおばさんが何やら言い返している。ここにいる皆が警察に歯向かっているわけだ。 冷静に考えれば信じられない光景だ。なぜならここにいるのは狂信的な過激派でもなければ60年安保の頃の学生でもない、普通の市民なのだから。

雨は土砂降り。傘をさしていても隣の人の傘を伝う雨水がようしゃなく降りかかってずぶ濡れだ。そうこうしているうちにデモの前の方に押し出されてきてしまった。最前列の人たちはあきらかにほかの人たちと表情が違った。憎しみを帯びた顔だ。「もっと押せー!」と叫ぶ人もいた。スクラムを組んだ警官は人々を支えながらついにズルズルと後退した。警官の向こうに報道のカメラのストロボのAF補助光が赤く光った。首相官邸交差点付近に到達したころ、ふと時計を見るとデモ終了時刻の20時を過ぎていた。振り返ると多くの人は解散し始めていた。

 今日のデモは先週までと違い、予定時間をオーバーしたうえ、警官とのもみ合いが起こってしまった。野田首相が先週のデモに際し「大きな音だね」と無神経なコメントを発したせいだろうか、人々の怒りはとっくに沸点に達しているのだ。「国民の生活を守るため再稼働が必要」と訴える野田さん、あなたの頭こそ再起動が必要だ。
 




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