2007年8月4日土曜日

阿久悠さんの言葉


作詞家の阿久悠さんが亡くなられた。毎週土曜日の新聞の時事コラム「阿久悠 書く言う」が好きだった。6月以降、連載が止まっていたのでどうしたのだろうと思っていたところだった。
コラムの阿久さんは、いつも何かに怒っているようで、読む方もつい待ってました!と「今週の阿久語録」を期待してしまうのだが、いっぽうで「それを言っちゃおしまいよ」の寅さんのようにどこか温かくフォローするところがあった。物事に苦言を呈するときはステレオタイプでなく、阿久さんなりの客観的な状況判断を働かせた上で論じる。決して突き放すような言葉は使わない人だった。
そんな阿久さんの逝去を報じるニュースで本業の作詞家としての軌跡を見た。ピンクレディーは言うに及ばず、「津軽海峡冬景色」(石川さゆり)、「北の宿から」(都はるみ)、「青春時代」(森田公一とトップギャラン)、「時代おくれ」(河島英五)、「熱き心に」(小林旭)、「勝手にしやがれ」(沢田研二)、「鳥の詩」(杉田かおる)、「もしもピアノが弾けたなら」(西田敏行)、「ウルトラマンタロウ」、「宇宙戦艦ヤマト」(ささきいさお)、「デビルマンのうた」、「哀愁物語」(村下孝蔵)……。自分の記憶に濃密に刻まれた作品だけ挙げてもこれだけの数になるし、どの歌も今でもスルスルと口ずさむことができる。
若い妻が夫を殺害してバラバラにしタクシーや電車で遺体を遺棄した事件の報道に対しては、マスコミが「エリート」「ブランド」「セレブ」などの「称号のようなカタカナ」を連呼していることを指して、「格差を厭いながら、格付けを妄信することの矛盾に早く気がつかないと、犯罪がセレブの資格になったりする」(産経新聞『阿久悠 書く言う』より)と阿久さんは論じていた。
5000曲以上といわれる著作の数もさることながら、これだけ人口に膾炙した作品を遺した阿久さんのコラム「書く言う」がもう読めないのは本当に残念だ。心からご冥福をお祈りします。

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