この付近の高架下には昔の京王の社紋が刻まれた標柱があります |
その工事のポイントとなる風景を、京王多摩川〜調布間を走る電車から撮影してみました。
京王線は調布駅で京王相模原線と平面交差しています。上り下りの線路がそれぞれ2方向に走っているので、ラッシュ時などの過密運転時は調布駅の西側で2線を走る列車が互いの進路を塞ぐ状態になります。相模原線の列車が本線の列車の通過を待つため渋滞が発生します。また、列車の間隔をギリギリまで詰めるATC(自動列車制御装置)をもってしても、いや逆にこのシステムを運用するからこそ、現状は改善の余地を「使い切った」状態といえます。
この列車渋滞が踏切渋滞を引き起こしてきたため、東京都が主体となって今回の連続立体交差事業が進められてきました。完成すると18カ所の踏切が解消されるということです。
写真は京王相模原線の京王多摩川駅から調布に向かって高架を下りてきたところ。この付近は調布に向かって多摩川の河岸段丘斜面を登るように線路が走るので、高架橋がいつの間にか地平になっているような錯覚を覚える場所です。工事が完成すると地平からさらに地面に潜る形になります。ちょうど白く土嚢が敷き詰められている辺りが地下への下降開始地点と思われます。
土嚢の向こうの区間は、すでに地下に線路が敷設された部分。18日深夜から19日にかけて、この場所にたくさんの工事関係者が集まり、世紀の切り換え工事が行われるのです。時間があればぜひ見てみたいのですが。
通称「品川通り」と呼ばれる道をくぐります。もともとこの通りは線路をアンダーパスしていましたが、工事に伴って仮のオーバーパスになっています。
いよいよ京王線(公式ではありませんが本線と呼ぶ場合もあります)と合流する地点です。写真は自分(相模原線上り)を含め、すべての線路上に列車がいる状態です。私が乗っている電車は写真なかほどを走る本線下り電車の通過を待っている状況です。これが画面中央の踏切を「開かず」の状態にしているわけです。
新設される地下線では、下り列車が地下2階ホームに、上り列車が地下3階ホームの発着になります。それぞれのホームの反対側に本線の列車が発着します。
信号が変わり(実際はATCなので運転席にのみ表示されます)、相模原線上り列車は晴れて調布駅に入っていきます。この日、踏切ではたくさんの人が電車の写真を撮っていました。皆、数日後には地上から電車の姿がなくなる、ということを実感しているのでしょう。
余談ですが、1958(昭和28)年まで、調布駅は画面の左手前にありました。それまでの電車は一両あたりの長さが短かったので、相模原線(当時は多摩川原が終点の多摩川線でしたが)は今より急なカーブで分岐できていたからです。 当時駅前にあった調布銀座という商店街が現在の駅ロータリーから西に200mほどずれた場所にあるのはそのためです。
踏切通過後、列車は1番線から本線下り線への渡り線、本線下り線を横切って調布駅の3番線に入ります。
この3番線・相模原線上り列車と4番線・本線上り列車の「同時進入」の風景が鉄道ファンならずとも認める調布駅の名物だったと言っていいのではないでしょうか。そんな風景や、列車がポイント(分岐器)を通過するときの盛大な金属音も数日後には過去のものになるのです。先日の東京新聞の多摩版に「ありがとう京王線」という横断幕を掲げる調布銀座商店街の方たちの記事がありました。「路線が無くなるわけでもないのに、惜別の思いが胸をよぎる」と。それは、調布駅の周りでカメラを構えている人々の気持ちを代弁しているかのようでした。
0 件のコメント:
コメントを投稿