ミストシャワーの向こうには樹木が見える |
著者の一志治夫さんの文がいいです |
その水戸岡さんの生きざまを徹底取材した本がプレジデント社から出ました。付き合いのあるカメラマンの川井さんが口絵写真を提供しています。
この本に書かれていたのですが、このJR博多シティの駅ビルの前に樹木を配することに、当初福岡市などは反対していたそうです。駅前に木などいらないと。そこで水戸岡さんはJR九州の唐池社長に植物学者・宮脇昭の本を送り、説得してしまいます。
僕は幸運にも仕事で水戸岡さんに二、三度お会いしています。のべ5時間近く話を伺ったなかで、水戸岡さんが何度も繰り返し言っていたのが「駅や列車などの公共の空間こそ最高のデザインを採用すべき」ということでした。人は最高のものを目にし、居心地のいい環境にいることで豊かな感性やマナーが育まれる、と。この本の冒頭で水戸岡さんがリニューアルに関わった富士急行の富士山駅(元・富士吉田駅)のことが出てきます。 改築前の駅を見て水戸岡さんが富士急の社員に言ったのが「ここに貼ってある張り紙は全部取ってください。どうして必要なのか、なぜその色なのか説明できないものは駄目です」。水戸岡さんは富士山という最高の借景がありながら、それを冒涜するかのように駅に溢れた猥雑な看板やポスターを何とかしたかったのだといいます。駅という公共の空間がもつ役割をはっきりと認識しているのです。
水戸岡さんが言っていることは何も特別なことではないと思います。与えられた状況で最高のものを追求するというのは、本気で仕事をする人間なら必ず意識すること。帯に書かれた「なぜ、九州の鉄道だけがあんなにもかっこいいんだろう」というコピーは大げさでもなんでもないのです。来年デビューするJR九州のクルージングトレイン「ななつ星」は、水戸岡さんのJR九州との仕事の集大成と言われる。実車の発表が楽しみです。
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