新聞のコラムで、温暖化対策として期待されているとされるバイオエタノールについて論じられていた。バイオエタノールを燃やして排出されるCO2は、植物がその生育過程で吸収したものであるから新たなCO2排出量はゼロとなる、とのいわゆる「カーボン・オフセット」という考え方が紹介されていたのだが、これはとんでもない「理論」である。
バイオエタノールの原料となるトウモロコシやサトウキビなどの作物を育てるには、他の農作物と同じように石油を燃やしてトラクターを動かし、石油から作られた農薬を使い、収穫した作物を自動車で工場へ運び、これまたエネルギーを使って稼働する化学プラントを経てやっとバイオエタノールができるのである。
環境問題とはトータルな目で検証されるべきなのは論を待たない。
環境問題に限らず、あらゆる問題を読者に対して多角的に論じるべき新聞がこのような近視眼でいいのだろうか。文中に「バイオエタノールを温暖化対策として位置づけるにはどうしたらいいか」とあったが、まずこの致命的な焦点のズレを認識しなければ、「バイオエタノールの燃焼により発生したCO2は、排出量にカウントしない」(京都議定書)という「詭弁」の矛盾に気づくことも難しいと言わざるを得ない。
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